【レポート】
食と大地の研究所♯002阿武の海藻編
海藻っていつどこに生えているの?
阿武の海藻観察&試食会
2026年2月15日実施
1|今回のテーマについて
「食と大地の研究所」は、食べものを入り口にして、私たちの暮らしと、その土地の環境とのつながりを考える研究所です。
今回のテーマは「海藻」。
ふだん何気なく口にしているワカメやノリですが、それらがいつ、どこで、どのように生えているのかを知る機会はあまりありません。
そこで今回は、阿武町奈古の海岸をフィールドに、実際に海藻を観察・採集し、その特徴を調べ、さらに試食を通して、身近な海の海藻の実態に迫る調査を行いました。
2|調査の視点
今回の調査では、次のような問いをもとに観察を行いました。
- 海藻はどこに、どのように生えているのか
- 場所や環境の違いによって、種類や形に違いはあるのか
- 種類ごとに、味や食感はどのように異なるのか
3|フィールドの特徴
4|調査の流れ
● フィールド(サンバシカフェ前の港周辺)
① 生きている海藻の観察と記録
② 海藻の採集
● 室内
③ 採集した海藻の観察と記録
④ 採集した海藻の試食
最初に、講師である福本真司氏(一般社団法人あぶナビ)から海藻についての基礎知識を座学で学んだあと、フィールドで岩場や護岸に生えている海藻を観察し、どのような場所にどのように生えているのかを記録しました。
その後、いくつかの海藻を採集し、室内で改めて種類の特定や形や特徴の観察をしました。
最後には採集した海藻を実際に食べて、味や食感を確かめました。
5|調査から見えてきたこと
① 海藻は「深さ」によってすみ分けている
観察の結果、海藻は岩場のどこにでも同じように生えているわけではなく、水深によって生える種類が分かれていることがわかりました。
波がよく当たる場所、長い時間水に浸かる場所、空気にさらされる時間が長い場所など、それぞれの環境に応じて見られる海藻が異なります。
つまり海藻は、潮の満ち引きによって変わる環境に合わせて生きる場所を選んでいるのです。
② 多様な海藻が共存している
採集した海藻を分類したところ、
・褐藻 7種
・紅藻 10種
・緑藻 4種
合計21種の海藻が確認されました。
色や形、手ざわりの違うさまざまな海藻が、同じ海岸に共存していることから、海の中にも多様な環境が存在していることがわかります。
■ 褐藻(7種)
- カヤモノリ
- ハバノリ
- フクロノリ
- ヒジキ
- ウミトラノオ
- アカモク
- ワカメ
■ 紅藻(7種)
- オキツノリ
- ムカデノリ
- サンゴモ
- ウスカワカニノテ
- ヒヂリメン
- フダラク
- マクサ
- オバクサ
- ウシケノリ
- アマノリ類
■ 緑藻(4種)
- アオサ
- ヒトエグサ
- シオグサ
- アオノリ
③ 場所によって海藻の顔ぶれが変わる
同じ海岸でも、場所によって生えている海藻の種類や割合に違いが見られました。
砂や礫が多い場所、岩場、コンクリートの護岸など、地面の違いや波の当たり方の違いが関係しているかもしれません。また、河口に近い場所と遠い場所との違いもあったことから、塩分濃度の違いも関係があるかもしれません。
海藻はどこでも同じように生えているわけではなく、その場所の環境に応じて分布が変わっている可能性が確認できました。
④ 食べてわかる違い
採集した海藻を実際に食べてみると、種類によって味や食感が大きく異なることもわかりました。
同じ「海藻」というひとくくりの中にも、それぞれに個性があることを実感しました。
6|特別研究員(参加者)の考察と次の問い
以下は、調査の最後に参加者のみなさんが書いてくれた「考察メモ」の内容です。
6-1.感じたこと・考えたこと
● 海藻の多様性・奥深さへの気づき
- 潮間帯の帯状分布や海藻の種類など、知らないことが多くあり興味深かった
- 思っていたよりも奥が深くておもしろかった。
- 海藻の種類が多いこと、また、同じ種類にもたくさんの種類があることにびっくりしました。
- 海藻は奥が深い
- 海草とひとくくりで考えていたが、種類も多くて、陸の植物とは全く違うことが知れて楽しかったです。もっと色々知りたくなりました。
● 分布や環境との関係への気づき
- 帯状分布が実際見て分かり易かった
- 海藻の暮らし(帯状に分布とか、他の生物とのかかわりとか)がおもしろかった
- 狭い範囲でも生えている海藻の違いが見られて面白かった・かぎられた小さな場所にもこんなにたくさんの種類の海藻があったこと、採集できたこと、驚きです。
● 観察・体験そのものの気づき
- 3色採集しようと思って観察しました。
- 海藻をもっと海水浴の時に観察してみようと思いました
6-2.次に確かめてみたいこと(検証アイデア)
● 時間的な変化(季節・成長)
- 季節による分布のちがいや同種の形態の違いなど、年間を通して調査してみる
- 季節によるちがい(味も)
● 環境条件の違い
- 海水、汽水、場所によっての違いを観察してみたい
- 自然の海岸と人口の海岸での生え方の違いがあるか
- 日頃、毎日のように食べています。温暖化で磯かれの状態を多く見られますが、対策はないのでしょうか
● 調査方法の工夫・深化
- 場所を広くしたり、一種類にしぼったりして色々検証してはどうか
● 大地とのつながりの解明
- 海藻とジオを通じた、台地・川・海との関連性の重要を説いてほしい
6-3.海藻以外に探究してみたい題材
● 食材と環境の関係(農産物)
- 果物の産地ごとの味の違い(りんご、もも、いちごなど)
- 地域で取れる野菜
- 火山の土とそうでない土の畑で育った作物で味の違いができるのか
● 水辺の生きもの・食材
- 川の食材(エビ、カニなど)
● 海の食文化・資源
- 海のもの
- 出汁としての海藻のことも探求したいです。
6-4.そのほかの声
● プログラムの満足度
- 参加できて知識が増し楽しかったです。
- 楽しかったです。ありがとうございました。次回また参加したいと思います。
- 子どもも楽しめました!
● 内容・講師への評価
- 先生の海藻愛が伝わってきました。
- 福本さんのお話がとても楽しく、研究所というより海藻の世界にどんどん惹き込まれ、とても楽しい時間を過ごしました。
● 改善・要望
- 福本さんのお話が面白いので(自由に)話していただける会があれば参加したいです。
とったものが簡単に食べられるのがいい - もう少し時間が長くてもいいかなと思いました。
● 社会的な視点(重要)
- 海藻を育てることが海・魚を育てることになる。目的としては、ここをどうしていくかを追及してほしい
7|この調査のまとめと、今後の進め方
今回の調査では、海藻と環境との関係の一端を明らかにすることができました。
今後は、季節による違いや、場所ごとの変化を継続的に調べることで、より詳しく海藻と環境の関係を読み解いていくことができます。
また、藻場の変化や人の暮らしとの関わりについても、調査を広げていく必要があります。
食べ物の背景にある自然のしくみを知ることは、これからの暮らし方を考えることにもつながります。
「食と大地の研究所」は、これからも身近な食を入り口に、大地と人のつながりを探る活動を続けていきます。
<主 催> 萩ジオパーク推進協議会 <共 催> 阿武町、一般社団法人あぶナビ
<講 師> 福本真司 氏(一般社団法人あぶナビ)